ステップ _9713

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マルコによる福音書 1

1 神の子イエス・キリスト福音のはじめ。

2 預言者イザヤの書に、「見よ、わたしは使をあなたの先につかわし、あなたの道を整えさせるであろう。

3 荒野で呼ばわる者の声がする、『主の道を備えよ、その道筋をまっすぐにせよ』」

4 バプテスマのヨハネが荒野に現れて、罪のゆるしを得させる悔改めのバプテスマを宣べ伝えていた。

5 そこで、ユダヤ全土とエルサレムの全住民とが、彼のもとにぞくぞくと出て行って、自分の罪を告白し、ヨルダン川でヨハネからバプテスマを受けた。

6 このヨハネは、らくだの毛ごろもを身にまとい、腰に皮の帯をしめ、いなごと野蜜とを食物としていた。

7 彼は宣べ伝えて言った、「わたしよりも力のあるかたが、あとからおいでになる。わたしはかがんで、そのくつのひもを解く値うちもない。

8 わたしは水でバプテスマを授けたが、このかたは、聖霊によってバプテスマをお授けになるであろう」。

9 そのころ、イエスはガリラヤのナザレから出てきて、ヨルダン川で、ヨハネからバプテスマをお受けになった。

10 そして、水の中から上がられるとすぐ、天が裂けて、聖霊がはとのよう自分下って来るのを、ごらんなった。

11 すると天から声があった、「あなたはわたしの愛する子、わたしの心にかなう者である」。

12 それからすぐに、御霊がイエスを荒野に追いやった。

13 イエスは四十日のあいだ荒野にいて、サタンの試みにあわれた。そして獣もそこにいたが、御使たちはイエスに仕えていた。

14 ヨハネが捕えられた後、イエスはガリラヤに行き、神の福音を宣べ伝えて言われた、

15 「時は満ちた、神の国は近づいた。悔い改めて福音を信ぜよ」。

16 さて、イエスはガリラヤの海べを歩いて行かれ、シモンとシモンの兄弟アンデレとが、海で網を打っているのをごらんになった。彼らは漁師であった。

17 イエスは彼らに言われた、「わたしについてきなさい。あなたがたを、人間をとる漁師にしてあげよう」。

18 すると、彼らはすぐに網を捨てて、イエスに従った。

19 また少し進んで行かれると、ゼベダイの子ヤコブとその兄弟ヨハネとが、舟の中で網を繕っているのをごらんになった。

20 そこで、すぐ彼らをお招きになると、父ゼベダイを雇人たちと一緒に舟において、イエスのあとについて行った。

21 それから、彼らはカペナウムに行った。そして安息日にすぐ、イエスは会堂にはいって教えられた。

22 人々は、その教に驚いた。律法学者たちのようにではなく、権威ある者のように、教えられたからである。

23 ちょうどその時、けがれた霊につかれた者が会堂にいて、叫んで言った、

24 「ナザレのイエスよ、あなたはわたしたちとなんの係わりがあるのです。わたしたちを滅ぼしにこられたのですか。あなたがどなたであるか、わかっています。神の聖者です」。

25 イエスはこれをしかって、「黙れ、この人から出て行け」と言われた。

26 すると、けがれた霊は彼をひきつけさせ、大声をあげて、その人から出て行った。

27 人々はみな驚きのあまり、互に論じて言った、「これは、いったい何事か。権威ある新しい教だ。けがれた霊にさえ命じられると、彼らは従うのだ」。

28 こうしてイエスのうわさは、たちまちガリラヤの全地方、いたる所にひろまった。

29 それから会堂を出るとすぐ、ヤコブヨハネとを連れて、シモンとアンデレとの家にはいって行かれた。

30 ところが、シモンのしゅうとめが熱病で床についていたので、人々はさっそく、そのことをイエスに知らせた。

31 イエスは近寄り、その手をとって起されると、熱が引き、女は彼らをもてなした。

32 夕暮になり日が沈むと、人々は病人や悪霊につかれた者をみな、イエスのところに連れてきた。

33 こうして、中の者が戸口に集まった。

34 イエスは、さまざまの病をわずらっている多くの人々をいやし、また多くの悪霊を追い出された。また、悪霊どもに、物言うことをお許しにならなかった。彼らがイエスを知っていたからである。

35 朝はやく、夜の明けるよほど前に、イエスは起きて寂しい所へ出て行き、そこで祈っておられた。

36 すると、シモンとその仲間とが、あとを追ってきた。

37 そしてイエスを見つけて、「みんなが、あなたを捜しています」と言った。

38 イエスは彼らに言われた、「ほかの、附近の町々にみんなで行って、そこでも教を宣べ伝えよう。わたしはこのために出てきたのだから」。

39 そして、ガリラヤ全地を巡りあるいて、諸会堂で教を宣べ伝え、また悪霊を追い出された。

40 ひとりのらい病人が、イエスのところに願いにきて、ひざまずいて言った、「みこころでしたら、きよめていただけるのですが」。

41 イエスは深くあわれみ、手を伸ばして彼にさわり、「そうしてあげよう、きよくなれ」と言われた。

42 すると、らい病が直ちに去って、その人はきよくなった。

43 イエスは彼をきびしく戒めて、すぐにそこを去らせ、こう言い聞かせられた、

44 「何も人に話さないように、注意しなさい。ただ行って、自分のからだを祭司に見せ、それから、モーセが命じた物をあなたのきよめのためにささげて、人々に証明しなさい」。

45 しかし、彼は出て行って、自分の身に起ったことを盛んにり、またいひろめはじめたので、イエスはもはや表立ってはに、はいることができなくなり、外の寂しい所にとどまっておられた。しかし、人々は方々から、イエスのところにぞくぞくと集まってきた。

マルコによる福音書 2

1 幾日かたって、イエスがまたカペナウムにお帰りになったとき、家におられるといううわさが立ったので、

2 多くの人々が集まってきて、もはや戸口のあたりまでも、すきまが無いほどになった。そして、イエスは御を彼らにっておられた。

3 すると、人々がひとりの中風の者を四人の人に運ばせて、イエスのところに連れてきた。

4 ところが、群衆のため近寄ることができないので、イエスのおられるあたりの屋根をはぎ、穴をあけて、中風の者を寝かせたまま、床をつりおろした。

5 イエスは彼らの信仰を見て、中風の者に、「子よ、あなたの罪はゆるされた」と言われた。

6 ところが、そこに幾人かの律法学者がすわっていて、心の中で論じた、

7 「この人は、なぜあんなことを言うのか。それは神をけがすことだ。神ひとりのほかに、だれが罪をゆるすことができるか」。

8 イエスは、彼らが内心このように論じているのを、自分の心ですぐ見ぬいて、「なぜ、あなたがたは心の中でそんなことを論じているのか。

9 中風の者に、あなたの罪はゆるされた、と言うのと、起きよ、床を取りあげて歩け、と言うのと、どちらがたやすいか。

10 しかし、人の子は地上で罪をゆるす権威をもっていることが、あなたがたにわかるために」と彼らに言い、中風の者にむかって、

11 「あなたに命じる。起きよ、床を取りあげて家に帰れ」と言われた。

12 すると彼は起きあがり、すぐに床を取りあげて、みんなの前を出て行ったので、一同は大いに驚き、神をあがめて、「こんな事は、まだ一度も見たことがない」と言った。

13 イエスはまた海べに出て行かれると、多くの人々がみもとに集まってきたので、彼らを教えられた。

14 また途中で、アルパヨの子レビが収税所にすわっているのをごらんになって、「わたしに従ってきなさい」と言われた。すると彼は立ちあがって、イエスに従った。

15 それから彼の家で、食事の席についておられたときのことである。多くの取税人や罪人たちも、イエスや弟子たちと共にその席に着いていた。こんな人たちが大ぜいいて、イエスに従ってきたのである。

16 パリサイ派の律法学者たちは、イエスが罪人や取税人たちと食事を共にしておられるのを見て、弟子たちに言った、「なぜ、彼は取税人や罪人などと食事を共にするのか」。

17 イエスはこれを聞いて言われた、「丈夫な人には医者はいらない。いるのは病人である。わたしがきたのは、義人を招くためではなく、罪人を招くためである」。

18 ヨハネの弟子パリサイ人とは、断食をしていた。そこで人々がきて、イエスに言った、「ヨハネの弟子たちとパリサイ人弟子たちとが断食をしているのに、あなたの弟子たちは、なぜ断食をしないのですか」。

19 するとイエスは言われた、「婚礼の客は、花婿が一緒にいるのに、断食ができるであろうか。花婿と一緒にいる間は、断食はできない。

20 しかし、花婿が奪い去られる日が来る。その日には断食をするであろう。

21 だれも、真新しい布ぎれを、古い着物に縫いつけはしない。もしそうすれば、新しいつぎは古い着物を引き破り、そして、破れがもっとひどくなる。

22 まただれも、新しいぶどう酒を古い皮袋に入れはしない。もしそうすれば、ぶどう酒は皮袋をはり裂き、そして、ぶどう酒も皮袋もむだになってしまう。〔だから、新しいぶどう酒は新しい皮袋に入れるべきである〕」。

23 ある安息日に、イエスは麦畑の中をとおって行かれた。そのとき弟子たちが、歩きながら穂をつみはじめた。

24 すると、パリサイ人たちがイエスに言った、「いったい、彼らはなぜ、安息日にしてはならぬことをするのですか」。

25 そこで彼らに言われた、「あなたがたは、ダビデとその供の者たちとが食物がなくて飢えたとき、ダビデが何をしたか、まだ読んだことがないのか。

26 すなわち、大祭司アビアタルの時、神の家にはいって、祭司たちのほか食べてはならぬ供えのパンを、自分も食べ、また供の者たちにも与えたではないか」。

27 また彼らに言われた、「安息日は人のためにあるもので、人が安息日のためにあるのではない。

28 それだから、人の子は、安息日にもまた主なのである」。

マルコによる福音書 3

1 イエスがまた会堂にはいられると、そこに片手のなえた人がいた。

2 人々はイエスを訴えようと思って、安息日にその人をいやされるかどうかをうかがっていた。

3 すると、イエスは片手のなえたその人に、「立って、中へ出てきなさい」と言い、

4 人々にむかって、「安息日に善を行うのと悪を行うのと、命を救うのと殺すのと、どちらがよいか」と言われた。彼らは黙っていた。

5 イエスは怒りを含んで彼らを見まわし、その心のかたくななのを嘆いて、その人「手を伸ばしなさい」と言われた。そこで手を伸ばすと、その手は元どおりなった。

6 パリサイ人たちは出て行って、すぐにヘロデ党の者たちと、なんとかしてイエスを殺そうと相談しはじめた。

7 それから、イエスは弟子たちと共に海べに退かれたが、ガリラヤからきたおびただしい群衆がついて行った。またユダヤから、

8 エルサレムから、イドマヤから、更にヨルダンの向こうから、ツロ、シドンのあたりからも、おびただしい群衆が、そのなさっていることを聞いて、みもとにきた。

9 イエスは群衆が自分に押し迫るのを避けるために、小舟を用意しておけと、弟子たちに命じられた。

10 それは、多くの人をいやされたので、病苦に悩む者は皆イエスにさわろうとして、押し寄せてきたからである。

11 また、けがれた霊どもはイエスを見るごとに、みまえにひれ伏し、叫んで、「あなたこそ神の子です」と言った。

12 イエスは御自身のことを人にあらわさないようにと、彼らをきびしく戒められた。

13 さてイエスは山に登り、みこころにかなった者たちを呼び寄せられたので、彼らはみもとにきた。

14 そこで十二人をお立てになった。彼らを自分のそばに置くためであり、さらに宣教につかわし、

15 また悪霊を追い出す権威を持たせるためであった。

16 こうして、この十二人をお立てになった。そしてシモンにペテロという名をつけ、

17 またゼベダイの子ヤコブと、ヤコブの兄弟ヨハネ、彼らにはボアネルゲ、すなわち、の子という名をつけられた。

18 つぎにアンデレ、ピリポ、バルトロマイ、マタイ、トマス、アルパヨの子ヤコブ、タダイ、熱心党のシモン、

19 それからイスカリオテのユダ。このユダがイエスを裏切ったのである。

20 群衆がまた集まってきたので、一同は食事をする暇もないほどであった。

21 身内の者たちはこの事を聞いて、イエスを取押えに出てきた。気が狂ったと思ったからである。

22 また、エルサレムから下ってきた律法学者たちも、「彼はベルゼブルにとりつかれている」と言い、「悪霊どものかしらによって、悪霊どもを追い出しているのだ」とも言った。

23 そこでイエスは彼らを呼び寄せ、譬をもって言われた、「どうして、サタンサタンを追い出すことができようか。

24 もし国が内部で分れ争うなら、その国は立ち行かない。

25 また、もし家が内わで分れ争うなら、その家は立ち行かないであろう。

26 もしサタンが内部で対立し分争するなら、彼は立ち行けず、滅んでしまう。

27 だれでも、まず強い人を縛りあげなければ、その人の家に押し入って家財を奪い取ることはできない。縛ってからはじめて、その家を略奪することができる。

28 よく言い聞かせておくが、人の子らには、その犯すすべての罪も神をけがす言葉も、ゆるされる。

29 しかし、聖霊をけがす者は、いつまでもゆるされず、永遠の罪に定められる」。

30 そう言われたのは、彼らが「イエスはけがれた霊につかれている」と言っていたからである。

31 さて、イエスの母と兄弟たちとがきて、外に立ち、人をやってイエスを呼ばせた。

32 ときに、群衆はイエスを囲んですわっていたが、「ごらんなさい。あなたの母上と兄弟、姉妹たちが、外であなたを尋ねておられます」と言った。

33 すると、イエスは彼らに答えて言われた、「わたしの母、わたしの兄弟とは、だれのことか」。

34 そして、自分をとりかこんで、すわっている人々を見まわして、言われた、「ごらんなさい、ここにわたしの母、わたしの兄弟がいる。

35 神のみこころを行う者はだれでも、わたしの兄弟、また姉妹、また母なのである」。